「人材育成がうまくいっている会社は何が違うんだろう?」「いろいろ取り組んできたけど、結局どうしたらいいのだろう?」「自分たちの取り組みは正しいのだろうか?」など、人材の育成に悩みはつきません。
そんなさまざまな悩みを解決に導くため、2016年12月12日(月)AP渋谷道玄坂渋東シネタワーにて、人材育成ご担当者様が語り合い、議論できる参加型セミナーを開催しました。本セミナーには40名近くの方にご参加いただき、各企業の最前線で活躍するご担当者様の非常にリアルで生々しいお話に、ご参加の皆様は熱心に耳を傾けていました。
フォーラムのポイント
【第1部 業界トップクラスの企業の人材育成ご担当者様によるパネルディスカッション】
「人材育成における各社のキーワード」、「具体的な取組み」、「苦労した(している)点」、「大切なポイント」、「今後の方向性」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。
■店長の現場力が上がれば、売上・利益が上がる
(株式会社AOKI 人事部 人財育成課 成田 博 氏)
現在AOKIでは“商品を売る”のではなく、“スタイルを提案”するということを非常に大切にしています。また「店長の現場力」こそが売上を左右すると考えており、各店舗の店長育成を重点取組みの1つとしています。中でも最も大切にしているのは、店長と店舗スタッフのコミュニケーションです。
店長と店舗スタッフのコミュニケーションが円滑な店舗は現場がイキイキとしており、売上も好調です。しかし、コミュニケーションが悪い店舗は、店に入るだけでも空気がよくないと感じることがあります。また接客に対しても「お客様が求めているものだけを売ればよい」という潜在意識が働いているため、結果として売上・利益が上がらない傾向があります。
そのような店舗を少しでも変えるため、現在弊社では毎週店長学習会を開催しています。また、研修が単発の一過性で終わらないよう、まず「どのような習慣が身についたか」、次いで「どのように売上・利益に結びついたか」を、1ヶ月後と3ヶ月後に観察し、フィードバックするサイクルを導入することで効果測定をしています。
■理念や行動の仕方などをまとめたシステム手帳を配布し共通言語化
(ユニ・チャーム株式会社 グローバル人事総務本部
キャリア開発グループ 福村 重和 氏)
弊社では“人が成長しなければ会社は成長しない”と考えています。それを現場でどのように体現するかということを重点課題として、人材育成に取り組んでいます。
企業理念や行動・マネジメントなど、ユニ・チャーム社員としてのあるべき姿をまとめた「The unicharm way」というシステム手帳を全社員に配布し、企業理念の浸透・共通言語化を図っています。
入社当初は企業理念に共感を持ち、希望を持って入社しても、多忙な毎日を繰り返すうちに、そのようなことも忘れてしまいがちになってきます。そのために研修では「普段考えないことを考えるための時間」として「自分がユニ・チャームにいる理由」や「会社の中でしたいこと」を自ら考え、明文化することを重視しています。
また弊社では「SAPS経営」を導入しており、毎週自身の掲げた行動重点とその出来栄えについて成果反省し、次週の計画に反映することで、徹底したPDCAサイクルを回しています。
【*SAPS=S:Schedule、A:Action、P:Performance、S:Scheduleの略】
■携帯ショップを「行きつけのお店」にするための人財育成
(コネクシオ株式会社 人事部 人財開発課 平山 鋼之介 氏)
弊社は携帯ショップの運営並びに大手家電量販店への携帯電話の卸売・販売支援をしております。モノづくりをしているメーカーではないので、差別化できるものは「ヒト」しかないと考えております。
昨今人口が減少、競合が増加し、人材の流動性が高いこの業界において、単にアクセスのよいお店だけでは勝ち抜けません。よって弊社では、携帯ショップを「行きつけのお店」にするための人財育成に取り組んでいます。
しかしまだ歴史が浅く、複数回のM&Aで拡大してきた会社であるため、出身母体や入社経緯による価値観の違いも非常に大きく、社員の風土や文化もまちまちです。そのため現在は人財育成の重点課題として、①現場力強化 ②共通言語づくり ③教育による会社の風土・文化の土台づくり」の3つに積極的に取り組んでいます。
特に現場力強化という部分においては、クレーム対応・販売・接客など、階層別の研修では十分に教育できない部分について、現場を巻き込み、人事部と現場マネジャーが一体となって現場力強化に向けた研修プログラムを開発するという取組みも行なっております。
■マネジメントの原理・原則を共通の土台としていく
(日本電気株式会社 宇宙・防衛営業本部 事業推進部 井上 聡 氏)
航空宇宙・防衛を扱う事業体として品質マネジメントシステムを構築していますが、それだけで品質の問題が発生しなくなるわけではない、というのが実態だと思っています。なぜ問題が発生し続けてしまうのか、何が必要なのかについて、組織横断的な課題に取り組むスタッフという立場から考え続けてまいりました。
弊社の強みが技術力であるが故に、品質問題の要因を特に技術面に求めてしまう傾向があります。一方で人に関する要因は、個人に特有の能力や性格によるものとして扱われ、組織的な施策が打てない状態にありました。
これら人に関する要因には共通性があり、つまるところマネジメントの原理・原則に基づく組織的な教育・訓練が不足していることに起因しているのではないか、この点に焦点を当てて取り組むことが、品質問題に限らず人に関する諸問題への抜本的対策に繋がるのではないか、という考えに至りました。
昨今人材の流動性が高まり、価値観が多様化する中、弊社では「どの層の」「何を」「どのように」認識を揃えるか、考える必要に迫られています。当事業体では、ドラッカーを基軸としたマネジメント研修に取り組んでいます。継続的な取組みにより、マネジメントの原理・原則が組織の土台として広く共通認識となっていけばと考えています。
【第2部 パネラーを交えた異業種交流会】
「人材育成でのお悩み」 「今後に向けて」をテーマに、パネラーを交えつつ、ご参加の皆様が率直にディスカッションできる場を用意しました。
皆様からは以下のような課題が寄せられ、「自社でも同じ課題を抱えている」といったお悩みの共有や「自社ではこのような取組みを行っている」などのアドバイスが相互に交わされ、非常に活発な交流・ディスカッションが行われました。限られた時間ながらも、他社の生の声をもとに自社の取組みやそもそもの目的を改めて見つめ直すきっかけとなったようで、多くの方にご満足していただけました。
- 同僚の動き方を「見て盗む」風土が強い。その中で、研修を一過性のイベントで終わらせずに、どのように日常の業務に定着化させていったらよいか?(自動車リース・メンテナンス、学校法人)
- 研修により新人や若手は変わりつつあるが、40~50代の管理職の考え方やスタンスがなかなか変わらず、マネジメント以前にコミュニケーションの段階で円滑になっていない。(電機製造、印刷、派遣・請負など)
- 新入社員など、社員が自発的に学ぶ意欲・姿勢が乏しい。主体性のある企業風土を創っていくためにはどうしたらよいか?(建材製造、水産物等加工、環境施設運転・管理など)
- 「部下の育成面」や「情意面」をいかに測定し、評価に組み込んでいったらよいか?(水産物等加工、人事ソリューションサービス)
ご参加の皆様の感想
- パネラーの業種が多様で、人材育成の考え方や取組みを赤裸々にお話しいただき、普段聞けない貴重な話が伺えました。また、他社の人材育成担当の方と、悩みや取組みについて情報交換する機会はなかなかないので、とても参考になりました。(電機製造、総合専門小売、クレジットカードなど)
- 各パネラーが共通して、経営課題と人材育成を関連付けて考えている点がとても印象に残りました。改めて、経営理念の大切さを痛感しました。(石油・天然ガスの探鉱・開発・生産、光学機械器具製造・販売、携帯電話卸売・販売など)
- パネラーからの「人が育つ上で70%を占める『経験』において、10%を占める『研修』で学んだことをいかに念頭に置いて活用してもらえるか」というご意見は、「経験」と「研修」をリンクして捉える着眼点がためになりました。また、複数のM&Aを繰り返してきた企業であるがゆえに「共通言語づくり」に重点を置いている点も印象に残りました。(電機製造、決済処理サービス、発電所運転員の教育・訓練など)
主催者からのメッセージ
企業は人・モノ・金・仕組み・情報といった経営資源を通して、あるべき姿を達成しようとしていますが、そこには必ず経営課題が存在します。本来、その解決に向けてなすべきことは多く、研修は「人」を通じて経営課題を解決するための手段の一つ、と位置づけられるはずです。
しかし、研修を経営課題の解決に焦点を定めて実施しているかと問われると「?」と思われる方も多いのではないでしょうか?上層部や関連各所から日々様々な要望を受けているので、そんな経営課題の解決まで考えが及ばない、ということが多々あるのも事実だと思います。
イコアインキュベーションでは、お客様にとって「いち早く頭に思い浮かぶ、頼れる相談相手」を目指し、単なる「研修」の企画だけでなく、可能な限り経営課題の解決につながるところまでを意識してサービスを提供しております。そのような意識を人事部の皆様にも共有いただくことで、企業の研修の意義やプレゼンスは高まっていくのではないか、との思いから、本フォーラムを企画いたしました。
本フォーラムに関心のある方、より詳しく知りたい方は、以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。