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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第3回:艦上儀礼

艦上儀礼

今も昔も軍隊というところは儀礼を重んじるというのが通り相場であります。その中でわかりやすいものに、艦どうしの敬礼というものがあります。

人間だけでなく艦も敬礼するのです。自衛艦(海上自衛隊の護衛艦、輸送艦、補給艦、掃海艇など自衛艦旗(軍艦旗)を掲げた艦の総称)が、訓練、演習中を除き、洋上で行き交う場合には必ず敬礼をすべきことが規則で定められています。敬礼をする側の艦はラッパを吹くと同時に甲板上の乗組員が敬礼をします。敬礼を受けた側では、同様にラッパを吹いて、その艦に乗っている最高指揮官のみが答礼する、という形で行われます。このため、洋上で自衛艦を見つけると、艦型や艦番号などで速やかに相手を識別しなければなりません。また、司令が乗っているのか、艦長だけなのかをマストに揚がっている小さな指揮官旗という旗だけを頼りに識別するのです。そして、どの艦にも備えてある指揮官名簿から、自分の指揮官と相手の指揮官の上下関係を割り出し、どちらが敬礼するのかを判断するのです。

ところが、……ところがです。水平線上に護衛艦の艦影を見つけた若き新米士官がスマートに上記のことを実践し、「艦長、右15度反航の護衛艦は○○○○、艦長は2等海佐△△△△です。近づきましたら本艦から敬礼します。」と凛々しく報告並びに進言をすると、艦長はパイプの煙を吐きながら、「あいつは俺が4年のときの1年坊主や、敬礼なんかせんでええ…、でもかわいそうやから敬礼したろか」。

新米士官殿は、階級社会の中の厳しい現実を認識し、そしてこんな形式だけの儀礼に矛盾を感じるのでもありました。

各地の部隊が集まり、1か月以上海上訓練を続けることがよくあります。いよいよ別れて母港に帰る際の敬礼これはまた、格別の味わいがあります。

それぞれの部隊が一列単縦陣(艦が一列ずつ縦に並ぶ陣形のこと)ですれ違いながら相互に敬礼、答礼を交わします。そして、それが例えば大島の南方であったり、比較的横浜に近い場合には、佐世保や呉に帰る艦に対しては、国際信号旗「UW」(安全なる航海を祈る、を意味する)を掲げて、手空の者は全て上甲板に出て、帽振れをして、しばしの別れを惜しむのです。この光景に初めて接した先の新米士官殿、敬礼というもののひとつの意味を見たような気がするのであります。

米海軍でもラッパは使いませんが同様に艦の敬礼を行います。軍艦の儀礼というのは、細部の違いがあるにしても、万国共通で、私も宗谷海峡でソ連艦から敬礼されたこともあります。横須賀を母港とする米国第7艦隊の艦であれば、艦長の氏名や経歴くらいはある程度把握していますが、それ以外の場合は、指揮官旗や艦の大きさで適当に判断したりしています。でも、大体において米海軍の艦から敬礼してくることが多いのが、ちょっと不思議な私の体験なのです。

また、この敬礼というのは軍艦だけの儀礼ではなく、商船との間でも行われます。商船が軍艦と行き交う場合には、軍艦に対して敬礼するのが国際儀礼なのです。国際法上軍艦として扱われる自衛艦に対しては、ロシア船であろうとパナマ船であろうと敬礼します。方法は、同様にラッパではなく、自船の国旗を半分降ろして敬意を表し、軍艦のほうも軍艦旗を半分降ろして答えます。

日本では、国際儀礼を重んじない内航(国内航路)船や反戦思想にかぶれた外航(外国航路)船の航海士が外国軍艦に対し敬礼せず、ひんしゅくを買ったり、外交ルートで抗議を受けた例がよくあったようです。日本の常識=世界の非常識の一例です。

▽次号では・・・▽

皆さん、いかがでしたか?

敬礼にもいろいろな種類があるのですね。気持ちの良い挨拶は、相手との距離を縮めるのに最も有効なコミュニケーションです。相手の方にとって好印象となるコミュニケーションを意識し、人間関係、信頼関係を作っていきたいと思います。

次号は、「サイレントネービー」をお送りします。皆さん、是非お楽しみに・・・!

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