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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第26回:GMT(グリニッジ標準時)で動く米国海軍

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を
復刻版としてメルマガに載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、
退職後19年を経過した現在の私が当時を思い起こして感じていることを書かせて
いただきました。これまでのものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きした
ことを、特に明確な意図というものはなく、何となしに書いてみたいと思います。
「艦隊勤務雑感」という副題も、あえてそのままとさせていただきます。
むろん、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた私のことであり、主に艦「ふね」
(以後「艦」と「船」がごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や
海上自衛隊にまつわることでお話を進めたいと思っております。

私たちは通常の生活をしている際には、当然JST(日本標準時)という時刻帯で
生活をしています。
正確に言えば、これは、日本の明石市を通る東経135度の子午線上の時刻帯を
日本全国で統一して使っているということですよね。
この時刻は世界協定時(UTC)に対してプラス9時間であり、すなわち、日本の時刻は
世界協定時、あるいはGMT(グリニッジ標準時)に対して9時間進んでいるということ
になります。海外旅行に出かけると時差というものがあるため、時計の針を進めたり
遅らせたりするという経験は誰にもあると思います。
ところが、海上自衛隊においては、日常生活は当然日本の時刻帯で行われていますが
オペレーションに関するものは、基本的にはGMTで動いていきます。
米海軍とのインターオペラビリティを重視し、その向上を標榜してきた海上自衛隊で
あるからには、日本の近海で行動していても、使用時刻帯は米海軍に合わせてGMTを
使わざるを得なくなっていることだと思っています。世界中に展開している米海軍
では、常に共通の時刻帯を使用しなければならないということは考えるまでもない
ことですが。

私が若い頃は、海上自衛隊内の訓練ではJSTを使い、米海軍との共同訓練になると
GMTを使うという変則的なことをやっていたため、その時刻帯の使い分けで混乱をし
てしまい、つまらぬ錯誤やミスということもしばしばあったように思います。私が
退官する頃には、基本的にはオペレーションに当たっては、米海軍が参加しようが
しまいが、当然のようにGMTを使用するようになっていました。しかし、これまた、
難しいのですが、長期の訓練といっても、その多くは日本の近海で行われることが
多いため、朝太陽が登り、夕刻に沈む周期はJSTのプラス9時間帯で動いていきます。
(当たり前ですよね‥‥)
そのため、艦の日課も当然JSTで動いているのですが、上級部隊からの指示・命令や
報告などについては、すべてGMTで行われてきます。その際、朝の日の出の時刻にも
かかわらず、「202135Z」(※)などという時刻指示があった場合など、ただでさえ
睡眠不足の頭には混乱が生じてしまうのは仕方のないことかもしれません。ましてや、
長期の訓練航海でGMTに慣れきったところで訓練を終えて戻ってくると、また頭をJSTの
プラス9時間帯に戻さなければならないのです。これは時差ぼけという現象ではありま
せんが、プラスマイナス9時間という時間帯を行ったり来たりしたことによる後遺症と
でも呼ばれるのでしょうか。

(※暗号を使用したテレグラム(電報)の冒頭に、発信日時というものがつきますが、
211200Z NOV 2011」ということで、時刻の後に時刻帯を表す「Z」の文字がつい
てきます。「Z」はGMTであることを表し「i」はJSTであることを表しています。
「Z」を0(ゼロ)として数えていくと、「i」は9番目に当たりますよね。)

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