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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第37回:パイロット適性大‥‥?

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を復刻版で
載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、15年前に書いたものではなく、
退職後22年を経過してしまいましたが、現在の私が思い起こして感じていることを書かせ
ていただき、今後のメルマガに掲載させていただこう、などという企みをしております。
前回のものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きしたこと
を、特に明確な意図というものはなく、何とはなしに書いてみたいと思います。「艦隊勤
務雑感」という副題も、あえてそのままとさせていただきます。
むろん、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた私のことであり、主に艦(「ふね」と
読んでください。以後「艦」と「船」がごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や
海上自衛隊にまつわることでお話を進めたいと思っております。

今回は海軍(海上自衛隊)のお話しでも、艦ではなく飛行機の話です。
私は防衛大学校入校前から船(艦)乗り志望であり、それは海上自衛隊入隊後も変
わったことはありません。しかし、たった一度だけ、ほんの少しだけですが飛行機に
乗ってもいいかな、などと思ったことがありました。それは、防大の3学年の時のこと
でした。
鹿児島県の鹿屋にある第1航空群という部隊での初めての本格的な航空実習でし
た。防大においては、通常の大学の夏休みの前半である7月に、日常ではできない
自衛隊の訓練を1カ月弱行っていました。その内容は航空基地や部隊が何をしてい
るのかの説明を実地に受けたり、実際の航空機のオペレーションやその整備の状況、
航空管制の実情などを見学するのが主なのですが、その期間に実際の航空機にも
搭乗させてもらいました。当時はP2-V7あるいはP2-J(ネプチューン)、S2-F(トラッ
カー)と呼ばれた艦載の対潜哨戒機でした。今から見ると二世代、三世代前の哨戒
機ですが、これらの機で実習をさせてもらったことを今でも覚えています。離陸して
上空まで行くと、学生が交代で操縦席に座らせてもらいます。隣に座っている機長
から、簡単な操縦桿やラダーの操作法を教わると、ヘッドホンレシーバーから“You
have”という声が聞こえます。おずおずとラダーのペダルに足をかけ、操縦桿を
握ると、機長から、「左の島に向けて旋回して」と言われます。教わった通り操作
して左転しつつ、やや高度を下げます。意外と簡単にできるものです。すると、
「では、右90度に見える貨物船に向けて」と言われます。今度は先ほどより機首
を下げつつ右に傾きながら貨物船に向けていきます。その後何度かそのような指示
を受けて、何となく自分で飛行機を操縦している気分になったその時ヘッドホンレ
シーバーから機長の声で「君、上手いな‥‥!」という声が聞こえます。「いえ、
どうも‥‥」と私。すると機長が斜め後方で立っている副操縦士と「おい、こいつ
センスあるなー、艦に行かせるのはもったいないな」などと言っているらしいのが、
何となく感じられるのです。「おやおや‥‥」と思いつつ、機長から“I have”と告
げられ、その後他のメンバーと入れ替わります。着陸して機外に出ると、また機長
から、「君は艦が希望なのか、航空に来い、もったいないだろう」などと言われて
しまい、自分でも「そうかなー?」とややその気になってくるのが不思議なもので
す。このときばかりは本気で、「パイロットというのもまんざらでもないかな‥‥」
などと思ってしまいました。かなり良い気持ちになってその日の実習が終わりました。
その気分のまま入浴も済ませ夜となり、同期と一緒に飲んでいると、目の前のS君、
「俺、何だかパイロットの適性があるみたい」と言い出します。「何で?」と聞くと、
「いや、飛行機操縦してかなり褒められてさー‥‥」などと言っています。というと
隣のB君も、「俺もかなりセンスが良いと言われたよ‥‥」「俺も‥‥」「俺も‥‥」
ということでありまして、結果としてはよほどおかしなことをした者以外は、みな私と
同じように褒められてその気にさせられていたのでした。やはり優秀な要員を確保
しようとするのはどこも同じで、まんまとそれにのせられていた愛すべき若者たち
だったのでした。

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