こんにちは。水本龍馬です。今回のコラムでは昨年発出された緊急事態宣言の頃に感じていた私の中での葛藤をふりかえりたいと思います。
2020年2月27日、新型コロナウィルスの感染拡大の状況により、「安倍首相が全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう要請する」と語ったというニュースが流れました。このため、イコアにおいても子育て中の社員もいることから3月から基本的に在宅勤務に移行することとなり、私も在宅勤務をすることとなりました。とはいえこの期間、保育園では子供たちを預かってもらえており当初はやや気楽にも感じられる在宅勤務でもありました。
しかし、4月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が発出されました。大学や高等学校などの教育機関へも登校自粛が要請され、3歳と1歳(当時)の娘が通う保育園も翌日からは家庭保育が基本となりました。妻は医療従事者のため在宅勤務は困難であり、4月8日から5月25日に宣言が解除されるまでの約2ヶ月間、私は仕事と家庭保育の両立を一人で行うことになりました。妻はとても心配をしておりましたが、私の中には「なんとかなるだろう」という安易な気持ちがあったように思います。
始まってみると、業務と家庭保育の両立は想像以上に難しいものであり、何をするにももどかしく、葛藤の絶えない日々となりました。
心配する妻には、「心配をしなくても子供と家のことはちゃんとやれる…!」と言った手前もあり、自分でできること以上に家事をこなそうとしていたと思います。また「仕事はこれまでどおりきちんとやる…!」という思いもありました。そのような思いはありながらも現実は思い通りにいくわけがなく、思い描く理想と現実との差に、情けなくもあり、悔しくもあり、時には怒りの感情を外に出してしまうこともありました。妻も職場の上司や同僚もさまざまに支援をしてくれましたが、それさえも私が落ち込み、苛立つ原因となっていたように思います。
3歳の娘は友達に会えず、また外出ができないストレスで、泣くこともあれば必要以上におとなしくなるなど大変に辛かったのだと思います。1歳の娘はお腹が空いた、眠い、オムツを変えて欲しいなど、ことあるごとに泣いて意思を示す時期でした。仕事への集中力を維持することは難しく、同僚との打合せであっても娘たちがぐずるなど、申し訳ない気持ちが毎日のように続いていたものでした。
昼食時間も大きな悩みでした。13時に打合せを予定していることが多かったですが、娘2人の食べるスピードが遅く13時に食べ終えることができません。食事をとる娘2人を横目に打合せをおこない、時には食事を途中で終わらせることもありました。休日に作り置きをして早めに昼食をとる工夫も試みましたが、いつもより早い昼食は思うように食べてもらえず、13時まではどのようにしてもかかってしまいます。あきらめた私は13時の打合せを避け、14時以降に調整するようにしました。現在となっては工夫の一つでしかないのですが、当時の私は思うようにいかないことに落ち込み、苛立ちが募るばかりでした。
悪戦苦闘する日々の中で、上司や同僚に対しても私自身のもどかしさや苛立ちが、たとえオンラインであってもその表情や声にも出ており、伝わっていたいことと思いますが、そんな中で私を救ってくれたのは上司や同僚からの私の現状に対する率直な言葉でした。
「あなたはそんなにできる人間だと思っているの…?」という言葉を投げかけられましたが、その言葉で「ハッと」し、気持ちが「スッと」軽くなったことを覚えています。
同じような環境にある部下や同僚がいる方も多いことと思います。周囲の方々もどのように支援し、関わると良いのか悩むこともあると思います。2022年には出生時育児休業制度が施行されます。大きな意味のある制度の創設は大変良いことではありますが、これまで以上に仕事と家庭の両立に悩み、ストレスを感じる方が男女を問わず増えるのではないかと思います。そのような部下や同僚に対しては、必要以上の遠慮や配慮はせず、感じていること、思っていることを率直に伝え、支援してあげてください。本人は周囲に心配をさせず、迷惑をかけないために必死に考え、悩んでいます。そのような時の率直な言葉は自分の現実をみつめる機会となります。また周囲の状況をあらためて見直す機会ともなりました。
また、この経験から感じていることがあります。上司や同僚との会話です。このような状況に置かれると本人も周囲も遠慮や配慮の意識から必要以上に会話を避けてしまう傾向があります。しかし、このような環境下だからこそ互いにどのような思いであるのかを共有する必要があると思います。上司のみの理解ではなく、職場全体が互いに理解し合うことが必要だと思います。私は幸いにも上司に限らず同僚と雑談を含めてさまざまな会話をすることができました。迷惑をかけたことも多くありましたが、救われたこともたくさんありました。ぜひ率直に伝え合い、思いを共有していただければと思います。
とても辛く、葛藤の絶えない日々ではありましたが、現在となっては自分自身を見つめ直し、仲間の大切さを感じることができた貴重な体験であったと感じています。