対象
3年目、5年目、OJTリーダー、新任主任職、新任管理職
導入背景
先方社内で組織の現状を図る組織サーベイを実施したところ、約半数の社員から人材育成の充実を求める声が上がりました。特に「管理職のマネジメント力向上が必要」「OJT体制の充実による現場力の向上が必要」との声が多く、人材育成制度の抜本的な見直しを図ることとなりました。
管理職層ではマネジメントについての共通認識が薄く、各自のマネジメント能力に委ねられており、現場任せになっていました。また、新人の育成においても部門・部署によってバラつきが大きく、現場によってはOJTがうまく機能していないこともあり、新人の成長に大きな差となって表れることに危機感をお持ちでした。
これまで社内では研修や教育を行ってきたものの、必ずしも段階的・体系的な教育となっておらず、こういった現場間でのバラつきや現場任せという状況になってしまっていたため、「各階層に求められる共通事項」を幹として、各階層につながりのある研修を行うことにより人材育成に一貫性を持たせ、育成する風土をつくることをねらいとして本取組みが始まりました。
職場の問題・課題
- 新人のOJTが機能していない
現場でOJTはしていたものの、OJTリーダーとしての期待役割が明確でなく、現場任せになっている部分がありました。そのため、OJTリーダーが自分の業務を優先し、新入社員の育成が疎かになる傾向にありました。また、OJTリーダーに新入社員の教育を任せっきりになり、職場全体で育成をしていくという意識も希薄でした。 - 管理職のマネジメント力向上が課題
段階的な育成をされてこなかったため、マネジメント力にばらつきがありました。自社で求められるマネジメントに、管理職で共通した考えや判断軸が明確でなく、部下への関わり方がさまざまであったため、部署によって部下の成長スピードに差がでていました。 - 求める人材像の明確化・体系的な人材育成が不十分
会社が求める人材像やスキルが明確でなく、体系的・段階的な人材育成制度となっていなかったため、単発で研修や教育は行っているものの一過性のものとなってしまっていました。そのため、人材育成が現場任せになってしまうことが多く部署ごとにバラツキがあり社員の成長も差がでていました。また、個人のスキル頼り、自己流のマネジメントとなることで、社内で知見共有されず、属人化する傾向にありました。
特徴
- OJTリーダーを起点とした体系的マネジメント学習
OJTリーダーは新入社員に対するOJTの実施に向け、「OJTの基礎」を学んでいただきます。その後主任、課長と進む過程の「主任者研修」「管理者研修」の中で、「OJT実践編」「マネジメントの原理原則」を学び、段階的にスキルを身につけることで、OJT実践者としての厚みを増すよう設計しました。OJT実践者が毎期一定数増えることで、共通言語ができ、判断基準が統一され、会社全体のOJT体制が機能することを目指しました。 - 企業理念をもとに自分の在り方を考える
各階層で自身のありたい姿と会社の企業理念とを紐づけることで“なぜ自社で働くのか”という目的意識を明確にしました。全階層で組織のあるべき姿の達成に向けて自分の役割を意味づけすることで各階層で共通言語をつくり、能力を発揮できる環境を整え、一人ひとりが主体的に動けるようサポートしました。 - 教育効果の把握
研修実施後3ヶ月~6ヶ月程度で、各階層ごとに研修の効果をアンケートによって測定しました。研修の学習項目とリンクしたアンケートを作成し、研修後の受講者の実践、態度、知識等の変化を図ることで、研修効果をより具体的に明らかにしました。また、アンケートは上司、同僚、部下に対しても行い、受講者は自分が周囲からがどう映っているかを確認する機会となりました。自己評価と他己評価のギャップから、今後に何をすべきか判断する材料にもなりました。
研修全体図
プログラム概要
◆3年目研修
DAY | 1日目 | 2日目 |
テーマ | 今後も自社で働いていく意味 3年目としての期待役割 |
3年目に求められる行動 |
内容 | ・入社から3年間を振り返る ・仕事の基本の振り返り ・3年目に求められる役割 |
・問題発見解決 ・周囲を巻き込む ・後輩の指導 |
◆5年目研修
DAY | 1日目 | 2日目 |
テーマ | 今後も自社で働いていく意味 5年目としての期待役割 |
5年目に求められる行動 |
内容 | ・入社から5年間を振り返る ・仕事の基本の振り返り ・5年目に求められる役割 |
・問題発見解決 ・チームビルディング ・フォロワーシップ |
◆OJTリーダー研修
DAY | 1回目(2日)新人の配属前 | 2回目(2日)新人の入社10ヵ月後 |
テーマ | OJTリーダーの期待役割・育成方法 | 実践状況の確認、今後のOJTについて |
内容 | ・期待役割の確認 ・周囲を巻き込み成果を上げる ・OJTリーダーの役割 ・新人と関わるうえでの留意事項 ・コミュニケーションの基本 ・育成場面でのコミュニケーション ・育成計画について ・OJTマネージャー合同セッション |
・現状の共有/討議 ・導入研修の振り返り ・育成時実践スキル ・面談演習 ・時間のマネジメント ・リーダーシップと影響力 ・今後のOJT計画 |
◆主任研修
DAY | 1日目 | 2日目 |
テーマ | 主任者としての期待役割 自部署・担当職務の問題発見解決 |
上司の立場から自部署を考える 後輩の育成 |
内容 | ・主任者の立場と役割とは (リーダーとフォロワー) ・ケース研究 「主任者に求められること」 ・自部署と担当職務の問題発見・解決 ・リーダーに求められる5つの要件 |
・フォロワーシップについて考える ・上司の立場で自組織のミッション・ ビジョンについて考える ・担当職務のビジョン・ミッション を考える ・後輩育成 |
◆課長研修
DAY | 1回目(2日) | 2回目(1日)半年後 | 3回目(1日)2ヵ月後 |
テーマ | 仕事のマネジメント | 人のマネジメント (人を動かす上での基盤 /部下の成長) |
人のマネジメント (目標設定と評価) |
内容 | ・マネジメントとは ・管理職の8つの役割 ・業務の棚卸し ・ケース研究を使った 問題発見・問題解決 ・自部署の問題把握・ 原因分析・課題の明確化 ・マネジメントサイクル(PDCA) ・組織のあり方 ・判断・意思決定 ・影響力の発揮 |
・1回目のふりかえり ・自己の成長について 考える ・管理職に必要な「公」 と「私」 ・管理職に求められる 5つの基本要件 ・動機づけ ・働きかけの方法 |
・1回目・2回目の ふりかえり ・仕事の割り当て 「任せて・みる」と 「任せ・きる」 ・評価の留意点 ・日常の行動観察 |
受講者の声
【3年目】
- 自分は工場と近い仕事をしているので、直に工場の悩みや問題点を聞け、自分のテーマにつながる部分もあり有意義な時間を過ごせた
- 一度いまの自分の現状を振り返ったり、同期と情報を共有したりすることでこれからどのように仕事や先輩・上司と向き合っていくべきか考える機会となった
- 普段、上司や先輩から3年後や5年後にどうなっていたいか聞かれることが多かった。目の前の仕事でいっぱいいっぱいでそんなのわからないと思っていたが、この研修で同期や講師と話していく中で、自分を振り返ることができ、自分のやりたいことなど目標が明確になった。
【5年目】
- 自分ではまだまだ新人気分でいたが、5年目の社員として会社や上司から求められていることは大きく、全体を見て行動していかなければならないということを強く感じた。
- 会社員としての学びだけでなく、人として良い人材になるための勉強にもなった。
【OJTリーダー】
- 今まで新人に仕事を教えるときは自分の作業の合間に部分的に教えることが多かったのですが、これからは相手の目線になることを忘れずに、やってみせ言って聞かせてさせてみて、褒めるを実践していこうと思います。また、マネージャーとしっかり連携を取ってPDCAサイクルをまわしていきます。
- これまで何人もの新人を教育してきましたが、コミュニケーション不足や教育の仕方がよくわからないこともありました。今後は、研修で学んだことを実践し良い結果を出すとともに自分自身も成長できるような教育を心掛けます。
【主任】
- 社訓、社是、経営方針、中長期ビジョン、部門目標を改めて意識し、判断軸として決断していくことで、組織の一員並びにフォロワーとしての役割を担っていかなければならないと強く感じました。
- 今回、普段関わりがない部署の方たちと研修を行ったことで、みな会社の一員であるのだという仲間意識が強くなりました。
- 中堅社員としての心構えを今一度認識しました。また、会社全体に会社の魅力を多く伝えていくことで会社を盛り上げていくことも重要だと感じました。
【課長】
- 部員の気持ちや姿勢をわかったつもりになっている点があることに気付き、反省した。もっと意思疎通を取る機会を増やすことが大事だと感じた。
- 自身の職場の性質上、個人活動になりがちだが、その中での管理者としての立ち位置や役割に関してすごく考えさせられた。また、他部署の方々とディスカッションをすることにより違った観点からの考え方ややり方があるということにも気づけた。
研修担当者よりひと言
本研修は取り組み始めてから2年が経過し、研修の成果が徐々にでてきています。社内で「研修は人材育成のための投資」という考えのもと、会社として社員教育に力を入れていることが現場にも浸透し始めています。各階層ともに年次に応じた基礎的な考えをインプットすることで、求められる役割やマネジメントの判断基準が明確になっていき、自身の役割を考えることで仕事や人へ主体的に関わるキッカケが生まれていると感じています。こういった会社が変わっていく過程を一緒に過ごせていることは非常に幸せなことだと思います。